新しい資金調達の形として注目を集めているのが、購入型のクラウドファンディングになります。
2017年には77億円だった市場規模も、2019年には169億円と倍以上の伸びしろとなっており、今後も購入型クラウドファンディングの市場規模は伸びていくと予想されています。
支援者にもメリットがある資金調達の方法にはなりますが、普及とともにトラブル事例も発生するようになってきているのをご存知でしょうか。
事前の認識不足などもトラブルを誘発してしまう要因となるので、実行者はトラブルを回避するためにもきちんと知識を入れておく必要があります。
そこで本記事では、初めて購入型クラウドファンディングを実施する実行者向けに、基礎知識から実施前のチェックポイント、さらには実際に過去に起きたトラブル事例などを紹介します。
トラブルが発生してしまった場合の対処法なども含めて解説をしていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
クラウドファンディングに挑戦
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クラウドファンディングで起こりやすいトラブルの種類

プロジェクトの内容に応じた提供とリターンで成立する「購入型クラウドファンディング」ですが、実施後に起こりやすいトラブルにはいくつかの種類があります。
事前に起こりやすいトラブルを知っておくことで、トラブルの誘発を未然に防ぐことにもなりますので、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
プロジェクト未達成による事業トラブル
購入型クラウドファンディングには、目標金額に達成した場合にのみ支払われる「All-or-Nothing方式」と、目標金額の達成・未達成に関わらず支援金を受け取ることができる「All-in方式」が存在します。
All-or-Nothing方式の場合、プロジェクトが未達成の場合は支援者側に全額返金されるためトラブルになってしまうことはありません。
重要なことは「All-in方式」のプロジェクトが未達成になったときの事業リスクです。
クラウドファンディングにて、自社が設定した目標金額が全額集まる前提で事業をしている場合、目標金額未達成時に資金繰りが急速に悪化してしまう要因にもなってしまうので注意が必要です。
ネットによる炎上と拡散
最近ではスマートフォンやSNSなどの普及により、いい事例も悪い事例も拡散されやすい時代になりました。
特にTwitterなど匿名のSNSなどは拡散性も高いため、一度炎上してしまうと急速に拡散してしまう傾向にあります。
炎上する理由はさまざまな要因がありますが、「なぜクラウドファンディングで資金を集める必要があったのか?」この理由が問われているケースがほとんどです。
共感が得られない場合や、個人的な資金集めとして認識されてしまうプロジェクトだと炎上してしまうので、支援者からもきちんと共感が得られるかどうかも加味していく必要があります。
著作権侵害などのリスク
クラウドファンディングでプロジェクトを実行する場合、当然ですが著作権・特許権・商標権などの知的財産権の侵害に当たるコンテンツを利用することはできません。
もちろんプロジェクトの開始にはプラットフォーム側の審査があるものの、知的財産権の侵害はすべてをチェックできるわけではないため、審査を通過してしまうことも充分に考えられます。
著作権侵害していることをわかったうえでプロジェクトを実行するのは論外ですが、自分自身でも知らない間に何かしらの知的財産権を侵害しているケースもあります。
これらを放置した状態で不特定多数から資金を集めてしまうと、訴訟リスクも上がりますので、プロジェクトを開始する前にきちんと確認する必要があります。
トラブルが起きてしまう理由

ここまでにクラウドファンディングで起こりやすいトラブルを解説してきましたが、問題が起こってしまう要因はかならず存在します。
「なぜトラブルが起きてしまうのか?」を理解しておくと問題を未然に防ぐことにもつながるので、あらかじめ理解しておくようにしましょう。
発案者と支援者のサービスに関する温度差
トラブルが起きてしまう要因となるのが「発案者と支援者双方の間に考えている内容に温度差がある」ということです。
特にトラブルを誘発してしまう要因としてあげられるのが、支援金に対するリターンの内容です。
「いくらの支援金に対しどれだけのリターンが得られるのか?」を明確にしていないと、プロジェクトが仮に達成してもトラブルに発展してしまうケースがあるので注意が必要です。
またリターンの内容に関して、実行者側と支援者側で解釈が変わってしまうことが原因でトラブルになってしまうケースもあるため、リターンの説明は誰が見てもわかりやすく明確に記載しておくことが重要です。
知識不足によるトラブル誘発
なかには悪意を持った支援者によるトラブル事案などもあるかもしれませんが、実行者側の知識不足が原因でトラブルを誘発していることもよくあります。
最近では購入型と寄付型のクラウドファンディングを混同してしまい炎上した例もありますが、不特定多数から資金を集める性質上、実行者側はルールをきちんと理解しておかなければなりません。
トラブルに発展したあとに「知らなかった」ということにならないように注意してください。
クラウドファンディングのトラブルを回避するための基礎知識

起こりやすいトラブルと問題を誘発する要因について解説をしてきましたが、ここからはトラブルを回避するための基礎知識を紹介します。
具体例も交えて解説していきますので、これから購入型クラウドファンディングのプロジェクトを実行される方は参考にしてみてください。
掲載前は誇大広告に注意
特定商取引法(以下:特商法)では誇大広告を禁止していますが、購入型クラウドファンディングの場合は特商法の「通信販売」に該当します。
- 事実と違う内容を表示している
- 実際のものより良く表示させている
- 実際のものより有利であると誤認させている
そのため、これらに該当しないように広告表示をしなければなりません。
プロジェクト実行者はクラウドファンディングの支援者向けに、支援金に対してリターン提供する内容を嘘偽りなく表示しておく必要があります。
むやみに消費者側の期待値を上げすぎてしまうと、その後のトラブルにも発展してしまうほか、法令違反で罰金や業務停止命令などの行政指導を受けてしまう要因にもなるので注意しましょう。
事前に薬機法や景品表示法を確認
購入型クラウドファンディングの場合、一般的なECサイトと同様に薬機法や景品表示法を考慮する必要があります。根拠がない虚偽および誇大な表現は、薬機法や景品表示法に抵触してしまう可能性もあります。
また薬機法に違反してしまった場合の罰則は、「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金」と非常に重いです。
基本的にガイドラインに抵触している場合、プロジェクト掲載前の審査でプラットフォーム側から指摘されることが多いものの、プロジェクト実行者は表現方法に気をつけるようにしてください。
余裕のある生産スケジュールや納期を提示
納期や生産スケジュールは、もっとも起こりやすいトラブルのひとつです。
- 当初想定していたよりも支援者が集まった
- コロナなどの外的要因で部材調達が遅延して生産スケジュールが遅れる
など納期が遅れてしまう要因はいろいろあります。
もちろんすべてが予測できるものではありませんが、消費者庁で公開されているトラブル事例のなかでも、全体の実に42.3%が「リターンの提供時期が遅れた」という納期に関する部分です。
そのためトラブルを未然に防ぐ意味合いでも、あらかじめ余裕を持った納品スケジュールを表示することが重要です。
検品体制を整える
何かしらの製品を支援金に対するリターンとして提供する場合は、発送前の検品作業も重要な要素です。
- 届いた製品が不良品だった
- 梱包の状態が良くない
- 説明されている製品と違った
など製品に関する各種問題がありますが、発送前にきちんと検品しておけば回避できるトラブルも多いです。
SNSが普及した昨今では、小さな火種が大きく炎上していくこともあるので、製品発送前の検品体制はきちんと整えておくようにしましょう。
サポート対応も万全に
トラブルを未然に防ぐためには、支援者に対するサポート体制も重要です。
- 支援者からの質問に対してスピーディかつ正確に回答できない
- 活動レポートなどで定期的にアップデートがない
- 報告頻度が少ない
このような原因が後々のトラブルに発展していくケースも多いです。
各プラットフォームでは、ページ上でおこなえる活動報告機能なども実装されているので、プロジェクトの進捗状況なども含めて積極的に活用していきましょう。
また支援者からの問い合わせにはスムーズに返信していくことが重要なので、あらかじめサポートの人員配置なども考慮しておく必要があります。
返金対応も想定しておく
プロジェクトが成立した場合でも、その後の対応や製品トラブルが火種となり炎上してしまうケースがあります。一度支援者側とのトラブルが炎上して拡散をしてしまうと、最悪の場合は返金対応となることもあります。
その際に実行者側に返金対応できるだけの資本力がないと、当然訴訟リスクも上がってしまうので、あらかじめ最悪のケースである返金対応も想定しておく必要があります。
過去に多かったクラウドファンディングのトラブル事例

潜在的なトラブルはさまざまなパターンがあるものの、過去の事例を参考にすることは重要です。そこでここからは、実際に起きてしまったトラブル事例で代表的なものをピックアップして紹介します。
プロジェクトの掲載前に関する事例と、掲載後の事例をそれぞれ紹介しますので、ぜひプロジェクト運営の参考にしてみてください。
【掲載前のトラブル事例】商品掲載に必要な手続き不足
テレビや照明、スマートフォンなどの電気製品は、安全性の確保を目的とした「電気用品安全法」の規制対象となります。
そのため販売などをおこなう際には「PSE」の取得が義務付けられていますが、これらを取得しないままプロジェクトを起案してしまうケースがあります。
当然このようなケースでは掲載できませんので、プラットフォーム側による審査で落とされてしまうことがほとんどです。
必要な手続きをしない状態は、製品の信頼性を著しく下げることにもなるため注意してください。
【掲載後のトラブル事例】ガジェット類の通信接続ができない
掲載後のトラブル事例として多いのは、ガジェット製品の通信トラブルです。
bluetoothなどさまざまな通信規格がありますが、「うまく接続ができないため商品が使えない」ということが原因でトラブルになってしまうことがあります。
事前にきちんと検品しておくことで防げるトラブルも多いので、大きな問題に発展する前にかならず製品のチェックはするようにしてください。
実際にクラウドファンディングでトラブルが起きてしまった場合の対処法

実行者側も事前にさまざまな想定をしたうえでプロジェクトを開始しますが、それでも予期せぬトラブルが起きてしまうことは考えられます。
トラブルが起きてしまった場合は、できるだけ早く収束に向けて動かなければなりませんので、事前にどのような対処法を取るべきなのか覚えておくようにしましょう。
運営に相談する
クラウドファンディングは不特定多数から資金を調達する方法となるため、トラブルの対象が支援者1人ではなく複数名になることも多いです。
実行者・支援者の当事者間ではなかなか解決できない内容は、第三者としてプラットフォームの運営会社などを間に入れることで解決に向かうことがあります。
そのためトラブルが起きてしまった場合は、最初にプラットフォームの運営会社に報告・相談をするようにしましょう。
誹謗中傷や法的トラブルは弁護士へ
当事者間で起きたトラブルであれば、話し合いなどを経て解決に向かうことも多いです。
しかし場合によっては炎上による拡散が起きてしまい、トラブルの渦中である当事者以外からの誹謗中傷やネットリンチが発生してしまうことがあります。
一度拡散が起きてしまうと、事実でない指摘や法律に触れるようなトラブルに発展していくこともあるので、誹謗中傷を含む法的トラブルは弁護士へ依頼するようにしましょう。
クラウドファンディングでトラブルを回避のまとめ

実行者と支援者の両者にメリットがある購入型クラウドファンディングも、やり方を間違えてしまうと予期せぬトラブルに発展することもあります。
特に最近では、TwitterやInstagramなどのSNSで一気に炎上が拡散してしまうケースもあります。
準備を怠らずに実施することで炎上リスクを抑えることにもつながるので、プロジェクトを実施してしまう前にきちんと知識を入れておくようにしましょう。
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