近年、クラウドファンディングは広く認知されるようになり、資金調達の手段として定番となりました。ただ、すべてのプロジェクトが目標金額を達成出来ているわけではなく、失敗事例もたくさんあります。
一般的には目標金額を達成する事ができればクラウドファンディングのプロジェクトは成功だといえます。
しかし、資金調達後に事業がうまくいかなくなってしまうケースもあり、その後事業が継続できたかどうかもプロジェクトの成否を決める要因だと私は考えています。
資金を確実に集め、なおかつプロジェクトを成功させるためにはどのようなことに気を配ればよいのでしょうか。
今回は、実際のクラウドファンディングの成功事例から学ぶ、成功のためのメソッドをお伝えします。
クラウドファンディングに挑戦
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そもそもクラウドファンディングがなぜ失敗するのか
クラウドファンディングを利用し、資金を集めようとしている企業や団体、個人は年々増えています。その中でなぜ成功事例と失敗事例に分かれてしまうのか。
実は法則があります。
ここではついつい見落としてしまいがちな失敗ポイントを4つご紹介します。まずはご自身のプロジェクトを省みて、当てはまる部分がないか検討してみてください。
支援者のことを考えていない
クラウドファンディングに失敗するプロジェクトには、準備をする際にプロジェクトのことばかりを考えてしまうという特徴があります。
プロジェクトを成功させ事業のためにお金を集めるという事自体は間違ってはいないのですが、ここで一度支援者の立場に立って考えてみましょう。
少なからず支援者自身のお金を使うわけですから、得体の知れないプロジェクトや資金集めだけが目的に見えるようなプロジェクトを支援したくはないはずです。
プロジェクトページを作成するときは、主観的な視点だけでなく客観的な視点もあわせて、支援者が共感できるページ制作を心がけてください。また、事前に出資を考えている人からの信頼を獲得できるようなプロモーション活動も効果的です。
支援者は自分の出資額に対して何らかの貢献やリターンを期待しています。
取り組むプロジェクトの先にはどのようなニーズが隠れているのか、綿密に分析し、支援者のことも考えた計画を立てましょう。
利益を得るためにクラウドファンディングを利用している
「クラウドファンディング」という単語を聞くと、どうしてもお金を集めるという部分に目がいきがちです。
しかし、利益を生み出すことを目的にクラウドファンディングを始めると、たとえプロジェクトの目標が達成できたとしてもかなりの確率でプロジェクト終了後事業の継続ができずに失敗します。
それはなぜか。
クラウドファンディングはお金を儲けるために行うものではないからです。
実際、利益は想像以上に生まれません。
例えばクラウドファンディングを行うとプラットフォームごとに手数料がかかります。
また、リターンとして製品やサービスを特別価格で提供する場合には、目標金額を達成しても利益はほとんど残らないケースが少なくありません。あくまでクラウドファンディングは必要な最低限のお金を集める手段として捉えましょう。
事前準備が不足している
クラウドファンディングを掲載することは、「金銭的な面では」必要な資金を集めるための手段に過ぎないということを分かっていただけましたでしょうか。結果的に利益がほとんど残らないから、というだけではありません。
プロジェクト全体においてクラウドファンディングが果たす役割は、ほんの一部分に過ぎません。プロジェクトを立ち上げ、資金を集め、事業を継続的に運営していくプロセスのひとつにクラウドファンディングがあるのです。
綿密な計画と万全の準備を行い、「あとは資金だけ」となったタイミングで初めて出資を募ります。
事前準備を怠り、資金集めにしかフォーカスしなかったらどうなってしまうでしょうか。
目標金額を達成できなかったり、目標金額を達成してもその後計画が破綻してしまったりと失敗に終わってしまうことが考えられます。
事前にしっかりと準備をした上で出資を募らないと、ビジョンを明確に示すこともできません。それになにより、自分自身でどのようにプロジェクトを進行すればよいのか分からなくなってしまいます。
また、クラウドファンディングという言葉だけが先行し、その仕組みを理解していないケースも多くあります。プロジェクトに対して、掲載するプラットフォームは適切かなどを理解しておくとよいです。
事前準備を怠らず、隙のないプロジェクトを作りましょう。
クラウドファンディングがもたらす副産物を意識していない
先ほど、クラウドファンディングは「金銭的な面では」資金調達の手段に過ぎないという点についてお話しました。
実は、得られるメリットは資金の調達ができることだけではありません。むしろお金以上に得られるものがあります。
それはプロモーションができることです。
クラウドファンディングを行うことで製品やサービスの認知拡大を図ることができます。この後紹介する成功事例でも、クラウドファンディング利用で得られるプロモーション効果を最大限活用しています。
また、テストマーケティングにより一般販売に向けて消費者の声を事前に聞くことができるのも大きな副産物です。ここで得られたマーケティングデータは将来的に事業化をする際に極めて大事になってきます。
こうした資金調達以外の部分にも目を向けることで、プロジェクトの成功に一歩近づきます。
それではここから、実際のクラウドファンディングの成功事例とその成功要因を解説していきます。
ご自身でプロジェクトを進行されている場合には、これらのプロジェクトとの比較を通して何が足りていないのか考えてみてください。
事例①「収納ボックス型時短リュック」のクラウドファンディング成功例
まずご紹介するのは、東大阪のバッグ製造会社エルグラン様が行ったクラウドファンディングの事例です。
エルグラン様はミセス・ハイミセスに向けたバッグを長らく自社開発してきましたが、2018年11月にMakuakeで新規企画「KABAG」プロジェクトをはじめます。
KABAGのコンセプトは『ありそうでなかったものを形にする』というもの。そのコンセプトをもとに、これまで6回ものプロジェクトが立ち上げられてきました。
ここでは、このKABAGプロジェクトから学ぶ成功ポイントを解説します!
成功ポイント①:複数回のクラウドファンディングでファンを獲得
先ほどご紹介したとおり、KABAGプロジェクトは最新の「収納ボックス型時短リュック」プロジェクトを含めて計6回行われてきました。毎回ニーズに合わせた商品がリリースされ、そのたびに注目を集めてきました。
この6回のクラウドファンディングがいずれも成功したのは、商品の質が高かったからなのはもちろん、ファンを確実に獲得していくことができたからでした。
1回目こそMakuake内でもKABAGのことを知らない人が大半でしたが、2回目のプロジェクト以降はKABAGのことを認知した上で支援する人が現れるようになりました。
その後はテレビやメディアでの紹介がされ、次第にMakuake外の人にも認知されていきます。
そうしてファンの獲得を続けたKABAGプロジェクトは、6回目も583名もの支援者を集めて無事成功し初めてリターンが完売。大幅な目標金額の達成や資金調達を収めました。
これはクラウドファンディングがプロモーションや認知度向上に役立った良い例だといえます。
複数回継続してプロジェクトを立ち上げ続けることができれば、そのたびに認知度の向上を狙うことができるので、プロモーション面では非常に有利になります。
最終的に事業化する場合でも、ここで得た評判や信頼、そしてサポーターが背中を押してくれるはずです。
成功ポイント②:支援者のニーズを最大限汲み取る姿勢
6回目のKABAGでは「収納ボックス型リュック」が制作されたとご紹介しましたが、このリュックをはじめとしたKABAGプロジェクトの品々は支援者からの声を最大限反映しています。
テストサンプルを支援者に渡してフィードバックを受けたり、商品開発企画に実際の支援者の方々を招きいて生の声を反映させたりと、かなりの力の入れようでした。そうした支援者や世の中のニーズを汲み取ろうとする姿勢があってこそ素晴らしい商品が出来上がっているのです。
冒頭、失敗しないためには「支援者のことを考える」ようにすべきだとお伝えしましたが、この事例こそが「支援者のことを考えた」プロジェクトの最たる例だといえるでしょう。
支援してくれるサポーターのことを考えて実際に製品へ声を反映することで、プロジェクトは成功に近づきます。
事例②「姫路黒桟革のボディバッグ」のクラウドファンディング成功例
続いてご紹介するのは兵庫県の伝統工芸「姫路黒桟革(ひめじくろざんがわ)」を使った製品を製造、制作している坂本商店様です。姫路黒桟革を使った自社ブランドのボディバッグのプロジェクトです。
姫路黒桟革は元々武士の鎧に使われていた革細工で、近年では剣道の師範代の武具に使われることがほとんどでした。しかし剣道人口の減少による市場の縮小や安価な海外製品の流入により、経営が厳しくなります。
そこから高級ブランドのバッグや高級車の内装用途で販路を拡大しますが、「姫路黒桟革」という名前は浸透しませんでした。そこで姫路黒桟革の知名度の向上と普及を目的として始まったのが、ボディバッグ制作プロジェクトでした。
このプロジェクトも先程の事例と同じく、Makuakeで立ち上げられたものですが、成功の仕方が全く違いました。
たくさんの支援者や支援額を集めたプロジェクトが必ずしも成功といえるわけではないことがよく分かる、非常に勉強になる事例です。
成功ポイント①:安売りせず、価値を下げなかった
先に申し上げておくと、このプロジェクトで集まった支援者の数は11名でした。そしてリターンは1点85,000円。この2つの数を見て、あなたはどう思いましたか?
支援者の数については、他のプロジェクトの支援者数の平均と比較すると少なく思えてしまうかもしれません。そして、リターンの金額も高いように感じられた方もいるでしょう。
しかし、姫路黒桟革プロジェクトでは、この金額で11名を集めることが出来たのは大成功だったのです。
もちろんリターンの金額設定を低めにすることで多くの人を集めることは出来たかもしれません。それでは当然値下げした額に応じてリターンの質やブランド価値は下がってしまいます。
このプロジェクトの目的は高品質な姫路黒桟革の認知度を高めるところにあったので、高い品質を担保するためこの金額で支援の募集をしました。
安易な安売りに頼らず、本当に価値を理解してくれる人にだけ出資してもらおうとするというその姿勢こそが、このプロジェクトの成功ポイントだったのです。
成功ポイント②:目的を明確にし、見失わなかった
先ほどの成功ポイントにも繋がりますが、このプロジェクトの目的はあくまで伝統工芸としての姫路黒桟革の認知度向上でした。
その目的は、Makuake内外で話題化させることで達成しました。事実支援者は少なかったものの、約2万回のページビューがありました。また、実際に高品質な製品を届けることが出来たという部分についてもゴールにたどり着いたと言えるでしょう。
そこまで考えた上ではじめて、このプロジェクトは成功だったとみなすことができます。
主催者自身が目的を見失ってしまうと出資者も支援をためらってしまいます。プロジェクトの最終的な目的はどんなところにあるのか見据え、初志貫徹することがクラウドファンディングの成功につながるんです。
プロジェクトを達成する極意のまとめ
クラウドファンディングの成功事例を2つご紹介し、その成功要因を分析してきました。規模やリターンの大きさ、最終な目的は2プロジェクト間で大きく異なっていたことがお分かりいただけましたでしょうか。
最後に、この記事でご紹介したポイントをまとめました。ぜひ復習し、ご自身のプロジェクトを進行する際に参考にしてみてください。
成功事例と失敗事例の間には確かな差がある
クラウドファンディングのプロジェクトを見ていると、一見どれも同じようなフローでプロジェクトが進行しているように見えます。しかし成功するプロジェクトは事前準備やプロモーションに余念がなく、資金調達を行った後もリターンまで隙がありません。
一方、失敗するプロジェクトは資金集めにしか注力しておらず、前後の運用も場当たりなものが多いです。理解していただきたいのは、資金の調達に成功したからといって必ずしもプロジェクトが成功したとはいえないということです。
肝心なのはその後どのように事業を継続し、最初に設定した目的を達成していくか。それができるか否か、それらがプロジェクトの成否を分けます。
熱い思いと綿密な計画があってこその成功
プロジェクトを継続していくために必要なものはなにか。それは熱い思いと綿密な計画です。
きっとプロジェクトを立ち上げる際には、プロジェクトを成功させたいという強い心意気があると思います。大切なのはその思いを持ち続け、なおかつ綿密な計画を立てて目標達成のための取り組みを着実に行っていくことです。
気持ちだけではいつか行き詰まってしまいます。事業を継続させていくために、準備には時間をかけましょう。
目的をしっかり見据え、適切なプロジェクト進行を
支援者数の多さや、出資額の大きさだけではプロジェクトの成否を測ることはできません。はじめに設定した目的を達成してこそ、プロジェクトは成功したといえます。
ご自身のプロジェクトの最終的なゴールがどこにあるのかしっかりと考えた上でプロジェクトを始めてくださいね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。ご自身でもたくさんのプロジェクトについて調べ、成功要因や失敗要因の分析をしてみてください。必ずプロジェクトを立ち上げる際に役立つはずです。
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