「クラウドファンディングをインターネットで調べるといいことばかりみたいに書いてあるけど、本当だろうか」
「クラウドファンディングだけに期待をしてもいいのだろうか?」
「メリットだけじゃなく、デメリットを詳しく知って失敗したくない」
コロナ禍以降、日本のクラウドファンディングへの関心は以前より格段に高まり、市場も活発化し、プロジェクトを実行する側(起案者)も支援する側(応援者)も、その裾野は確実に広がっています。
誰でも気軽にインターネットで支援金を集めることができる仕組み、そんな期待や魅力が広がっている中、クラウドファンディングのメリットを伝える記事はネット上にたくさんあります。
最近では資金調達以外にも、テストマーケティングや新しいファン作りに活用される機会が増えました。
けれども本当に、「誰でも気軽に」できるのでしょうか。
メリットの影にかくれたデメリットにはどんなものがあって、それを避けるにはどうしたら良いのでしょう。そもそも避けられるのか。失敗したくない。
この記事では、クラウドファンディングのデメリットだけに焦点を当て、ご紹介いたします。
デメリットの内容や注意点、最小限にする方法、そして見過ごしがちな「クラウドファンディングの本当の目的」の重要性まで解説していますので、ぜひ参考になさってください。
デメリットを理解すれば、クラウドファンディングの可能性も広がります。
クラウドファンディングに挑戦
記事に迷ったら上から順にお読みください
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クラウドファンディングのおさらい
クラウドファンディングのデメリットについて正しく理解するために、「そもそもクラウドファンディングとはどのようなものなのか」、軽くおさらいしておきましょう。
クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、「クラウドファンディングサービスのサイト上で不特定多数の支援者を募り、資金を調達し返礼品を送ること」であり、大きく分けて「投資型」「寄付型」「購入型」と3種類の型があります。
- 「投資型」
-
分配金や株式などの金銭的なリターンが設定されている
- 「寄付型」
-
通常公益性の高いプロジェクトでモノなどのリターンがない
- 「購入型」
-
金銭以外のモノやサービスを受け取れる
プロジェクトを実行したい初心者にオススメは「購入型」です。
他の2種類の型は、以下のような理由から、特別な場合以外はオススメできません。
- 「投資型」
-
専門的知識が必要かつ、審査がとても厳しい。株式投資や利回りなど、投資家向けのクラウドファンディング。
- 「寄付型」
-
実行者に権威性がない限り、支援が集まりにくい。協力者が多いと発信も広がり、プロジェクトの共感が権威性に勝ることもある。
クラウドファンディングの用語
以下は、理解を深めるために最初に覚えておきたい基礎的なクラウドファンディングの用語です。クラウドファンディングを語る上でよく出てくる言葉なので、合わせて覚えておきましょう。
- プラットフォーム
-
クラウドファンディングを運営する会社が用意しているサービス。特徴は大きく異なるため、事前に下調べが必要。
プロジェクト-
クラウドファンディングで支援を募る計画全体のこと。
- 実行者(起案者)
-
プロジェクトを実行する人。クラウドファンディングで出資を募る人。
- 支援者(応援者)
-
プロジェクトを支援する人。クラウドファンディングに出資する人。
- リターン(品)
-
クラウドファンディングの支援に応じて受け取るモノやサービスのこと。返礼品。
- All-in方式
-
目標金額を達成しなくてもプロジェクトは実施、リターンあり。
- All-or-Nothing方式
-
目標額に達しなければ支援金は返金。リターンなし。
クラウドファンディングで抑えておくべき4つのデメリットとは?
では具体的に、クラウドファンディングのデメリットとしてどのようなものが考えられるでしょうか。型に関わらず、個人や法人であってもクラウドファンディング全般で生じるデメリットには、以下のようなものが考えられます。
① 準備や審査に時間がかかる
クラウドファンディングを始めようとすると、想像以上にたくさんの準備が必要になることに気がつくでしょう。
リターンを決め、それに合った型を選び、サイトを調べ、プロジェクトシートを作り、書類をそろえ……。
とくに初めての時は、わからないことだらけでスムーズにいかないことも多いはずです。
また、登録までこぎつけたとしても、今度はプロジェクト内容の審査が待っています。
有名なサイトを例にとりますと、CAMPFIREの場合は即日〜5営業日、Makuakeの場合は3〜5営業日ほどかかるようです。
なんとなくやりたい時にすぐ始められる、そんなものではありません。個人であっても法人であっても進め方は同じです。
② 管理にお金や時間がかかる
クラウドファンディングサイトの利用手数料やページに載せる写真・動画の撮影費用、リターンが品物であればその製造および発送手数料など、「金銭」面のコストはさまざまに考えられます。決して無料でできるわけではありません(プラットフォームによる)。
クラウドファンディングで集まった金額はプロジェクト終了後に振り込まれ、一般的には1ヶ月から2ヶ月の期間がかかります。すぐにお金が回収できるわけではありません。
また一方では、支援者とメッセージをやりとりする時間も多少必要ですし、リターン品の発送を委託しない場合は、自分たちで荷作りや発送手続きをしなければなりません。
少なくとも、自分やスタッフの「時間」というコストも考慮に入れておく必要があるでしょう。
とくにお金の面では失敗につながる事例も多いため、十二分に注意すべきです。
③ 一度開始すると、原則、中断できない
一度プロジェクトを始めると、相応の客観的に認められる理由がない限り、原則として中断することはもちろん、一時的な取り下げや非公開にするなどもできません。簡単に公開を止められないと理解しておきましょう。
④ 半永久的に記録がWeb上に残ってしまう
前項の通り、一度開始すると中断できない上に、プロジェクトの結果が失敗した場合でも、その記録を削除したり非公開にしたりなどはできません。つまり、業績としてほぼ永久にネット上に残ってしまうのです。
また、プロジェクトページには支援者からのメッセージもそのまま残るため、返信が遅かったり不誠実なやりとりをしてしまったりなどの失敗も、時間がたった後でもたどれてしまいます。
「次のプロジェクトや事業に『悪い意味で』影響が出てしまう可能性もある」ことは、しっかり頭に入れておきたいところです。
購入型クラウドファンディングで注目すべき2つのデメリットとは?
ここからは、初心者にもオススメの型の「購入型」クラウドファンディングでとくに気になるデメリットを見ていきましょう。
⑤ 目標額未達成でもリターンを用意し、手数料を払わなければならない
先ほど用語のところで確認した通り、All-in方式を選択した場合は、目標金額を達成できなくてもリターン品を準備して発送し、購入型クラウドファンディングのサイトに手数料を支払わなければなりません。
出資額を低すぎる設定にしたり、過度に豪華なリターン品を設定したりした場合など、相当の赤字が発生してしまう可能性もあります。
All-in方式では支援が少ない場合も想定し、ビジネスや経営に影響ができない取引を行いましょう。
⑥ アイデアを競合他社に盗まれる可能性がある
革新的で独創的な製品や、他社製品にないちょっとした便利さを売りにした製品をプロジェクトで発表した場合、そのアイデアを競合他社に盗まれてしまう可能性は否定できないでしょう。
生産に時間がかからないような製品だった場合、最悪のケースですが、プロジェクト終了後に他社からより安価に売り出されてしまう……などという心配もあります。
商品やサービスの保証は、プラットフォーム側で対応してくれません。プロジェクトの申請をする前に、エビデンスなどの取得を考えなければいけません。
法人であれば法務部などの協力をえられますが、個人だとそうはいきません。とくに個人で購入型クラウドファンディングを実施する場合は注意してください。
デメリットを最小限にするために
ここまで読んで、たくさんのデメリットを前に尻込みするような気分でしょうか。
【クラウドファンディングのデメリット】
① 準備や審査に時間がかかる
② 管理に時間やお金がかかる
③ 一度開始すると、原則、中断できない
④ 半永久的に記録がWeb上に残ってしまう
⑤ 目標額未達成でもリターンを用意し、手数料を払わなければならない
⑥ アイデアを競合他社に盗まれる可能性がある
残念ながら、これらのデメリットのすべてを完全に避けることはできません。
しかし、「プロジェクトの失敗」に絡むデメリットが多いことにも気が付いたのではないでしょうか。
逆に言えば、失敗を避けるように行動することでデメリットを小さくし、結果的にプロジェクトが成功する確率を上げられるということです。
そこでここからは、「失敗というリスクを管理する」ことでデメリットを最小限におさえる方法について解説します。
クラウドファンディングは準備で成否が分かれる
結論から言いますと、「失敗というリスクを管理すること」=「準備をしっかりすること」に他なりません。
では、それぞれのデメリットに対してどんなふうに考え、どんな備えをすればいいでしょうか。⑥は少し特殊ですので後に取り上げることにして、①〜⑤までを見ていきます。
「① 準備や審査に時間がかかる」は必要不可欠
準備や審査に時間がかかることだけは、絶対に必要なことと割り切りましょう。
審査はともかく、準備にはたっぷり時間をかけ、十分に計画を練るべきです。最初に述べたとおり、これ以降のデメリットの②〜⑤はすべて準備不足により増幅されるものだからです。
準備の最初に、まずはクラウドファンディングの目標を決めます。
クラウドファンディングを実行する際の目標としては、以下のようなものがあります。
- 資金調達:
-
さまざまな用途の資金集め。
- ブランディング:
-
ブランドを作る・構築する。競合他社との違いを明確にし、「自社企業やその製品の価値」と「消費者のイメージする価値」を一致させるための取り組み。
- マーケティング:
-
顧客のニーズに合った商品を作り、効果的にその情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする。
ただし目標を設定する前に、「クラウドファンディングの成果をどのように生かすのか」をしっかりと計画しておいてください。なぜなら、どのように生かすのかによって目標も変わってくるためです。
実はこれが、記事の冒頭で示した【見過ごしがちな「クラウドファンディングの本当の目的」】になります。
クラウドファンディングはそれ自身が目的ではなく、そこから得た成果をその後の事業に生かすことこそが醍醐味なのです。
「成果をどのように生かすか」がないままプロジェクトを実行すると、一回限りの成功は得られるかもしれませんが、かけたコストが何倍にもなって返ってくるチャンスを自らつぶしてしまうようなことにもなりかねません。
何を目標とするのか、成果をどのように生かすのか。慎重にしっかりと決めてから、必要な準備にはたっぷりと時間をかけて、プロジェクトを形にしていきましょう。
「② 管理にお金や時間がかかる」への準備
管理のさまざまなコストを下げるには、最初にその内容を把握しておくことが大切です。種類としては、「金銭」と「時間」があることは先に触れました。
それらを踏まえると、
- リターンの準備費用、手数料、発送方法とその費用など、経費を洗い出す
- どんな作業にどの程度まで自分やスタッフの時間を割けるか、具体的に考える
などが挙げられます。
目標を達成するためには何が必要か、優先順位をつけて数字を割り出してみましょう。また、集まった資金の支払いはいつになるかなど、お金や時間に関係する情報は必ず把握しておくべきです。
お金にかかるお問い合わせでとくに多いのが、リターンの費用について相談です。リターンは支援者にとって一番見るポイントになるため、実行者は「割引をすべきか」に悩まれます。
筆者は、「割引前提でリターンを考えるべきではない」と考えています。資金調達やテストマーケティングにせよ、プロジェクトそのものの価値を感じてもらわなければ、その後の事業にも繋がらないからです。
安易に割引をすれば、「お得だから支援した」「安いから支援した」とプロダクトの価値ではなく、金銭的な価値で支援されるかもしれません。
リターン設計をする上で悩んだ場合、①でお話した目的が明確でないことが考えられます。例えば目的がマーケティングであれば、クラウドファンディングを宣伝媒体として考えてみてください。
割引の差額は広告宣伝費として考え、リターンを割り引いて支援しやすくするのも戦略の1つです。目標や目的意識がない割引はすべきではありません。
「③ 一度開始すると、原則、中断できない」への準備
中断したくなるのは、どんな時でしょうか。
おそらく、プロジェクトが失敗しそうな時や、計画の見通しが甘かった時ではないでしょうか。「プロジェクトが失敗しそう」にはいくつもの要因があると思いますが、「計画の見通しが甘かった」は言葉通りです。
たとえば、プロジェクトが開始されると変更できない「リターン経費の見積もりの甘さ」かもしれませんし、作業に携わる「人的資源の不足」かもしれません。
いずれも事前の準備や計画に問題があるケースです。プロジェクトの準備として、早めの準備が欠かせません。
「④ 半永久的に記録がWeb上に残ってしまう」への準備
これに関しては「失敗しない」に尽きると、誰でも考えるでしょう。
「準備不足が失敗というリスクを増幅させる」。
これを肝に銘じて、今から始めようとしているプロジェクトのため、そして今後の事業のためにも、満足のいく記録を残せるようにあらゆる手を尽くすことです。
「⑤ 目標額未達成でもリターンを用意し、手数料を払わなければならない」への準備
④同様に失敗しなければ発生しないデメリットのようにも思えますが、リターンと集めた資金との釣り合いが取れておらず赤字になる事態は、目標金額が未達成の場合だけとは限りません。
「『③ 一度開始すると、原則、中断できない』への準備」で見たとおり、一度プロジェクトを開始すると中断はできません。ですから、準備の段階で手数料など諸々の費用をしっかり計算しておかないと、目標金額を達成しても赤字になってしまうことはありえない話ではないのです。
損益分岐点はどこなのか数字としてしっかり把握し、あなたのプロジェクトにとって適正な目標を設定する必要があります。
手数料に関しては各プラットフォームによって異なります。手数料が安いに越したことはありませんが、手数料に囚われないようにしてください。
手数料はプラットフォームのサービス提供にもつながっています。手数料は高いが手厚いフォローを受けられる。手数料は実行者ではなく、支援者側に負担してもらうなど、プラットフォームによって考えが異なります。
「⑥ アイデアを競合他社に盗まれる可能性がある」に備える
⑥のデメリットを避けるには、ここまでとは少し異なる対策も必要です。
結論を言いますと、革新的アイデアの製品を世に出す場合は、特許の出願をしておくのが一番となります。
ただし、手順などを調べるとわかりますが、権利を得るためには発明の内容を「正しく」説明する必要があるため、弁護士を代理に立てて出願することが一般的です。つまり、それなりの費用がかかります。
その費用と製品の価値が見合っているかどうか、事前にきちんと調査する必要があります。
ひとまず悩んだら、「特許・実用新案、意匠、商標」について「特許情報プラットフォーム J-Plat Pat」(独立行政法人 工業所有権情報・研修館)で検索してください。
実際の特許の広報を見ることができ、出願の書類に記入すべき要点をまとめる助けにもなります。開発している製品周りの発明を知ることは、自分の製品に関するアイデアを得るなど役立つことも大いにあるでしょう。
なにより、自分の製品が他者の権利を侵害していないかどうかを調べることは、訴訟など思わぬデメリットを避けるためにもとても重要なことです。
クラウドファンディングのデメリット&注意点とは? まとめ
クラウドファンディングのデメリットについて見てきましたが、そのほとんどは、多くの準備不足によって増幅されることが理解できたと思います。
そして、準備不足になる主な原因は、クラウドファンディングの目標をしっかり定めていないから。
目標があやふや→準備不足→デメリット増幅→失敗
といった流れです。
一方で、成功するフローチャートを単純化すると、以下のようになります。
- クラウドファンディングを事業にどのように生かすか決める
- ①を達成するための目標を決める
- 目標を達成するための準備をする
- 目標に合ったクラウドファンディングのプラットフォームを選ぶ
- プロジェクトを実行する
- 目標を達成して成果を得る
- 成果を生かして事業拡大の足がかりにする
クラウドファンディングはそこで得た成果を生かすために実行するものであり、プロジェクトの成功はむしろスタート地点です。
デメリットを最小限にするような準備を整えてプロジェクトを実行し、クラウドファンディングで得た成果を十分に生かすことで、あなたの事業を大きく成長させましょう。この記事がクラウドファンディングの検討に役立てば幸いです。
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