「IT補助金って本当に役立っているのか?」
最近、私が感じていることです。
先日、ある驚くべき報告書を目にしました。
会計検査院による調査で、
IT導入補助金を利用した事業者の約70%に、
なんらかの不適切な行為が
あった可能性が示されたのです。
https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/6/pdf/061021_1.pdf
この数字の背景には、
何か深い問題が潜んでいるのではないでしょうか。
私はウェブ解析士の資格をもっており、
地方の中小企業のWebサイトを診断しています。
その中で気になるのが、
IT補助金を利用して制作されたサイトの現状です。
補助金を使って作られたものの、
更新が滞り、SEO対策も不十分なまま。
まるで「空き家」のような状態の
サイトを数多く見てきました。
なぜ、このような状況が
生まれるのでしょうか。
先日訪問した家族経営の小さな会社では、
こんな声を聞きました。
「補助金があるからと
言われて導入したけど、
使い方がよくわからなくて…」
この言葉に、
問題の本質が隠されているように感じます。
「補助金を獲得すること」が目的となり、
本来考えるべき「なぜそのシステムが必要なのか」
という議論が置き去りにされているのです。
会計検査院の報告書が示す
不適切な行為の背景には、
このような本末転倒な状況が
あるのかもしれません。
では、
どうすれば良いのでしょうか。
私が日々の診断業務で実践しているのは、
まず「対話」から始めることです。
先日、ある製造業の社長と
話をする機会がありました。
「とにかくホームページが欲しい」
と言っていた社長。
でも、じっくり話を聞いていくと、
本当の課題が見えてきました。
必要だったのは、
取引先との情報共有を効率化する
仕組みだったのです。
このように、補助金の有無に関わらず、
その企業が本当に必要としているものを
丁寧に探り出すことが大切です。
そして、
提案する側も変わる必要があります。
「伝える」から「伝わる」へ。
技術的な説明ではなく、
導入後の具体的な効果や、
運用にかかる実際の負担を、
わかりやすく説明することが求められます。
さらに重要なのは、導入後のフォローです。
先日私が支援した企業では、
月1回の定期訪問を行っています。
使い方の提案や改善点の指摘を続けることで、
徐々にITツールが社内に定着してきました。
IT補助金は、本来、
中小企業のデジタル化を支援する
素晴らしい制度のはずです。
しかし、
補助金の獲得自体が目的となってしまえば、
その投資は「空き家」を増やすだけです。
支援する側とされる側の、
質の高いコミュニケーションこそが鍵となるのです。
もし皆さんがIT導入を検討されているなら、
補助金の有無に関わらず、
支援事業者との対話の質に目を向けてみてください。
それが、より良いIT活用への第一歩となるはずです。