長年OEMに特化してきた製造業が、初めて自社ブランドを立ち上げる。この大きな転換点で、私たちが伴走支援させていただいた事例をご紹介します。
技術力には自信がある。品質も申し分ない。しかし、「お客さまが見えない」という根本的な課題にどう向き合うか。そこから得られた学びは、多くの企業にとって示唆に富むものでした。
目次
成功の理由が分からない
初期状況
- 売上の90%以上を1社のOEMが占める
- 初の自社ブランド商品をクラウドファンディングで発売
- 予想を超える支援を獲得
表面化した問題
しかし、成功の裏で経営者は大きな不安を抱えていました。
「なぜ売れたのか、自分たちで説明できない」
- 支援者の属性が不明
- 購入理由が把握できていない
- 外部に依存した企画のため、次の一手が打てない
まず「聞く」ことから
STEP
現状の可視化
私たちはまず、分かっていることと・分かっていないことを整理しました。
分かっていること
- 製品の技術的特徴
- 製造原価と品質基準
- OEM先の要求仕様
分かっていなかったこと
- 誰が買ったのか
- なぜ買ったのか
- 使用後の満足度
- リピート意向
STEP
仮説の構築
クラウドファンディングのデータから、以下の仮説を立てました。
- 年齢層の偏り
想定とは異なる年代が中心 - 価値認識のズレ
機能性だけでなく、別の価値に反応 - カテゴリーの再定義
商品カテゴリー自体の見直しが必要
STEP
直接対話の設計
最も重要だったのは、「聞く勇気」を持つことでした。
実施内容
- 全支援者への個別アンケート
- 購入前と購入後の2段階調査
- オープンエンドの質問で本音を引き出す
想定外の顧客像
データが示した真実
(現在進行中のため、以下は今後の展開)
アンケートの設計において重視したのは、
- 答えやすい質問から始める
- 本音を引き出す工夫
- 継続的な関係構築への布石
見えてきた方向性
すでに初期分析から、以下の気づきが得られています。
- 商品の再定義
「◯◯用品」ではなく「△△アイテム」としての可能性 - 顧客の多様性
単一ターゲットではない複数の顧客群 - 価値の多面性
機能以外の情緒的価値の存在
BtoCに必要な「聞く力」
OEMとBtoCの本質的な違い
項目 | OEM | BtoC |
顧客数 | 限定的 | 不特定多数 |
フィードバック | 仕様書 | 多様な声 |
価値基準 | 明確 | 曖昧・多様 |
関係性 | 契約的 | 感情的 |
「聞く」ことで変わること
- 内発的な気づき
- 自社の強みの再発見
- 新たな市場機会の発見
- 組織の意識変革
- 戦略の具体化
- データに基づく意思決定
- 顧客起点の商品開発
- 効果的なコミュニケーション設計
実践のポイント
- 小さく始める
- 完璧を求めない
- まず10人でも20人でも聞いてみる
- 継続的な対話の仕組みづくり
- 社内の巻き込み
- 経営者だけでなく全社で共有
- 顧客の声を直接聞く機会を作る
- 気づきを次のアクションにつなげる
- 外部の活用
- 客観的な視点の重要性
- ファシリテーションの価値
- 伴走型支援のメリット
顧客理解は終わらない旅
事例企業の挑戦は、まだ始まったばかりです。しかし、「聞く」という一歩を踏み出したことで、確実に変化が生まれています。
顧客理解とは、一度やれば終わりではありません。
継続的な対話、常に変化する顧客のニーズ、そして自社の成長。これらが織りなす物語を、丁寧に紡いでいくこと。それが、持続可能なブランドづくりの本質なのかもしれません。